「就活」と「終活」

久しぶりに多治見の実家に行った。
着いた時間は、夜の8時頃。
驚いたのは、虫たちの大合唱が
素晴らしい事と空の星が綺麗な事。
この空気感が、心と身体に
エネルギーを与えてくれる。
身体の細胞に染み渡っていくのが分かる。
やはり、多治見は、好きな土地だと、
改めて感じる。
父は、家のウッドデッキに
2つ椅子を並べて、毎晩夜空を眺める。
母の生前二人で一緒に眺めていたからだ。
今、一つの椅子は、空席になった。
夜空に目を凝らすと、
見える星がどんどん増えてくる。
飛行機が、流れ星のように
あちらこちらから、
点滅しながら飛んでくる。
この空を、二人で眺めていたんだ。
そんな父が、明日は午後から、
外出すると言う。
一体何処へ行くのか、、、。
聞いていいのか、、、。
変な気を使ってしまった。
それでも、どこに行くのか尋ねると、
さっと席を立ち、
一枚のチラシを差し出して、
「実は、今、シュウカツしていて、、」
母が亡くなってから、
塞ぎ込んでいた父が、
ちょっと照れながら、
嬉しそうに見せてくれたのは、
不動産屋のチラシだった。
【不動産屋さんで、短期でアルバイト
でもするつもりなのか?
もしくは、ポスティングの
アルバイトでもするつもりなのか?】
とりあえず、どんな職種でも、
父はが少しでも外に出て
働きたいのなら、
応援しようと思い、
咄嗟に「良いと思う!」と答えた。
「それで、どんな仕事?」
恐る恐る聞いてみた。
父は、臨床検査技師だった。
白衣が似合う父だった。
その父が、警備員さんの服装や、
歩きながらポスティングを
している姿を想像して、
今から、どんな答えが返ってくるのか、
ドキドキした。
父が笑って答えた。
「就活じゃなくて、終活!!」
ああ、そっちでしたか。
終活をすることで、
恐らく父は、亡母との距離が
近づいていくような
気がするのではないか。
父は、少しづつ、
元気を取り戻している。
以前、私が教えた天ぷらは、
アジなど魚を自分でさばいて、
アジの天ぷらまで、
作れるようになったらしい。
私の料理の腕を超えた。
「じょうたつ」している!

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