想い出のお菓子

もう、何十年も前の話になるが、
就職したての頃。
世の中がまだ、バブル経済が
はじけはじめても、なお、
明るくウキウキしていた時代。
とあるメーカーの
本社勤務となった私は、
いわゆるオフィスレディとして
働いていた。
学生時代は、
毎日同じような服を着て、
地味に四年間を過ごしたが、
会社では、毎日私服で、
洗礼された女性社員たちの中で、
私も頑張っていた。
というか、学生時代が、地味すぎて、
華やかな会社の世界が、眩しくて
刺激的で、楽しかった。

本社には、清掃会社から派遣された、
清掃のおばちゃまが
何人もいらっしゃった。
その中の、お一人と仲良しになった。
その方が、私に対して、
親近感を持ってくれたようだ。
その理由は、
「出身が博多で、
 博多名物のお菓子に載ってる人が、
 あなたにそっくりなの!!
 お菓子の名前は忘れた。」
という事だった。
私も、なんのこっちゃか、
よくわからず、そうなんですね~。
と軽く受け流していた。
どちらかというと、和顔なので、
年配の方には親近感を持たれる、
経験もあったし。

その方は、私に会うたびに、
そのお菓子に載ってる人に
そっくりだ、そっくりだ。
そして、今度里に帰った時には、
あなたに、そのお菓子をお土産で
買ってくる!!
と宣言されていた。
ただ、その話は、あいさつ代わりに
毎回出る話題だが、
肝心のそのお菓子が何かが、
一向にわからない。

すっかり、その話題も、
あいさつの一部で忘れかけていた
ある日、そのおばちゃまが、
そそそ~っと私の傍に来て、
あなたを見たとき、
この人だと思った!!
はいっと、お土産を頂いた。
へ~!!この人だと思って
くれたんですか!!
わ~!!ありがとうございます。

先日、たまたまそのお菓子を
お土産で頂き、思い出した。
30年近く前の出来事のなのに、
そのお菓子は、いや博多の銘菓は、
パッケージも変わらず健在だった。
二鶴堂さんの「博多の女(ひと)」

ほどよい甘みの小豆羊かんを、
しっとりとやわらかな
バームクーヘンで包んだもので、
卵の素朴なおいしさが
伝わるバームクーヘンに
羊かんの水分がなじんで、
独特のしっとり感が特徴のお菓子。

今は、味も増えて、
博多の女(ひと)も、
3名いらっしゃる。
今時の女の子もいるみたい。
でも、私は、
元祖、「博多の女(ひと)」です!!

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