SAKURAちゃん
この季節になると必ず思い出す子がいる。
私は、二児の母としているが、
息子と娘の間にもう一人子どもがいた。
その子は、産まれて来た時には
もう息をしていなかった。
もう少し詳しく説明すると、
生まれる前に息を止めてしまった。
9ヶ月に入ろうとしていた頃、
お腹もかなり目立っていたその日、
いつもと違うお腹の張りを感じていた。
多分、疲れているからだろう、
昼間に外出したからだろう。
なんだかんだと自分に
言い聞かせていたが、
夜中になってどうにもおかしい。
新しい家族のために
その日は、偶然にも家族が一人
増えるであろうと、
車を買い替えて、
新車が納車された日だった。
その新車に乗せてもらって、
かかりつけの病院へ。
そこからの記憶は、切れ切れでしかない。
切れ目なく記憶に残っていたら、
耐えられないだろうと私自身の脳が
判断したんだと思う。
覚えている事は、
「これは、あなた自身のせいではない」
と、何度も言われた事。
救急車で中村日赤病院へ運ばれた時、
救急隊の方が、
救急車はベンツ?だったかな?
一番揺れない車を選んでいるけど、
それでも揺れる。
気分が悪くなったら言って下さいね。
と関係ない話で心が逆に温まった事。
何かの間違い
病院へ搬送されると、
様々な書類の同意書のようなものに
サインを求められた気がする。
曜日は金曜日から日がまたいだ
土曜日の夜中。
私は集中治療室のような場所で
隔離をされていた。
土曜日、日曜日は病院はお休みだから、
月曜日まで待たなければならない
との事だった。
何が起きているのか、
正直まだ少し他人事だった。
奇跡が起きて、
またお腹の中の子が動き出し、
誤診でした!ってなるだろうって、、、
真剣に考えていたからだ。
意味が分からない
転院した先の病院の先生は、
「二日間(土曜日、日曜日)の間に
陣痛が来て
自然に産まれるのを待ちます。」
と言った。
私は言われている意味がわからなかった。
「お腹の中の赤ちゃんは、
亡くなっているのですよね?
自然に産まれるなんて事が
あるのでしょうか?」
先生は、
「お腹の中で赤ちゃんが
亡くなった時点で、あなたの身体は
悪いものが中にいると判断して、
出そうとする力が
自然に働きますから。」
悪いものって、、、
意味がわからなかった。
「赤ちゃんが、産まれるから出産にも
立ち向かえるのです。
亡くなった子を産むなんて
私にはできません、
帝王切開にして下さい。」
「あなたの身体と今後の為には、
自然分娩が一番いいという判断です。」
こんなやり取りをした覚えがある。
悲しかったのは、、、
結局、月曜日の朝方、
自然に産まれてくれた。
悲しかったのは、
その子は産まれてすぐに
洗面器に入れられて、私の頭上を通って
どこかに連れていかれた。
本来なら、真っ白なおくるみに包まれて、
誰からも祝福されるはずの子なのに、、、。
戸籍にものらない、
その子にはそれでも名前を付けた。
まだ、桜は咲いていた。
毎年、会いに来てくれる。
その子の名前は、
「SAKURA」ちゃん。
この後、偶然にしてはあまりにも
不思議な出来事が続く。