大惨事だった、あの発表会の
出来事を忘れかけたある日、
ピアノのレッスンの時に先生から、
その時の写真と、
自分の演奏を録音した、
カセットテープを頂いた。
写真はまだいい。
演奏の音は聞こえてこないから、、、。
でも、このカセットテープには、
あの、思い出すだけでも、
おぞましい、発表会での一部始終が
録音されているのだ。
このカセットテープの存在は、
私の中で、封印した。
母親には、写真だけは見せたが、
カセットテープの存在は言わず、
引出しの奥深くに隠した。
何故か、捨てる事は出来なかった。
このカセットテープは、
一生聴かないつもりだった。
聴き返すのもおぞましい、、、。
カセットテープの存在は、
すっかりと忘れていた。
十何年も眠っていた、カセットテープ。
それが、20代も後半の頃だろうか。
ある日、カセットテープを整理していたら。
ひょんなことから、
発表会の録音のテープが出てきたのである。
流石に、すっかりその時の出来事は
克服できているし、興味本位で
聴いてみることにした。
聴いてみて思わず、笑ってしまった。
なんと!!その録音は見事に、
編集されていたのだ!!
何度も途中で演奏が止まり、
初めに戻ってまた止まり、、、
なんとか、先の先のフレーズに飛んで、
必死で終わらせた曲。
録音されていた演奏は、
初めから、一度も止まらず、
途中、先の先のフレーズに飛んだ部分は、
確かに、曲として違和感はあるが、
まるで、1曲の演奏を通して止まることなく
終わったかのように、、、、
編集されていたのだ!!
いや、編集してくれたんだと思う。
恐らく、この録音の作業は業者さんに、
委託したのだと思う。
その、業者さんは、
この録音された演奏を聴いて、
傷ついているであろう、
身も知らぬ子どもを、
助けてくれたのだ。
編集に救われた、
温かい気持ちになった。
もっと、早い時期に聴いていれば、
私の暗い封印した思い出は、
少し変化していたのではないか。
あの、発表会を記録する唯一の証拠は、
何事もなかった演奏として、
記録されていた。
このテープ、、、、
捨てなくて本当に良かった。